
このような疑問を持った人は多いのではないでしょうか。
今回の記事は、CiNiiやJ-STAGEという論文検索ツールを使って、温泉の効果に関する論文を調べました。
結論は
「温泉は科学的にカラダに良いことが証明されている」
ということです。
それでは詳しくみていきましょう。
この記事でわかること
温泉の効果と科学的根拠
温泉についての基礎知識
温泉の効果
日本温泉協会が提示している効果
温泉には、
温熱・浮力・水力による物理的効果と温泉に含まれる物質の化学成分による効果があります。
また、温泉地の地形や気候・植物などの環境効果もあるといわれています。
具体的には、
日本温泉協会が温泉療養の適応症として「一般的適応症」と「泉質別適応症」を提示しています。
一般適応症 出典:日本温泉協会
泉質別適応症
- 単純温泉:自律神経不安定症、不眠症、うつ状態
- 塩化物泉:きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症
- 炭酸水素塩泉:きりきず、末梢循環障害、冷え性、皮膚乾燥症
- 硫酸塩泉:塩化物泉に同じ
- 二酸化炭素泉:きりきず、末梢循環障害、冷え性、自律神経不安定症
- 含鉄泉:ー
- 酸性泉:アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、耐糖能異常(糖尿病)、表皮化膿症
- 含よう素泉:ー
- 硫黄泉:アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、慢性湿疹、表皮化膿症(硫化水素型については、末梢循環障害を加える)
- 放射能泉:高尿酸血症(痛風)、関節リウマチ、強直性脊椎炎など
出典:日本温泉協会
しかし、この適応症をみて私が感じたことは
「本当に効果あるの?」という疑問でした。
なので、CiNiiやJ-STAGEという論文検索ツールを使って、温泉の効果に関する論文を調べました。
科学的根拠:温泉に精通している教授の論文
今回ご紹介する論文は、国際医療福祉大学の教授であり脳卒中や関節リウマチの研究をしていると同時に、日本温泉協会の理事を務め(2019年7月現在)温泉に関する数多くの論文や本の出版、テレビなどのメディアに出演している前田眞治教授の論文を紹介します。
参考論文:前田眞治.温泉はなぜ効くのか:科学的根拠を求めて.日本温泉気候物理医学会雑誌.73-1,1-2
この論文のPOINTは以下の通りです。
論文まとめ
- 温泉の効果には、物理的効果、化学的効果、刺激に対する生体反応効果が存在し、環境による要因も大きい
- 物理的効果には温熱効果、静水圧、浮力、粘性抵抗などがある
- 温熱効果には血液循環改善があり、循環の改善により創傷治癒の促進、疲労回復がもたらされ、組織の再活性が得られる。
- 温熱効果には神経に直接作用し、疼痛緩和、痙縮減弱作用、筋・関節拘縮改善などの科学的根拠も得られている
- 温熱効果には免疫力や生体修復機構の増強作用もある
- 静水圧や浮力、粘性抵抗は水道水でも温泉でもほぼ同じであるため、運動浴の効果などはほぼ同じと考えられる。
- 温熱効果は温泉でも得られるが、温泉には化学物質が溶けているため熱の吸収の速度が速く、温まりやすい
- 塩化ナトリウムや硫酸ナトリウムなどの塩類の泉質は、出浴後の体温の降下速度が緩徐であり、循環の亢進した状態が長く続く
- 炭酸水素塩、塩化物、硫酸塩などの成分は保温が認められ、温熱作用の長期持続効果をもたらす。
- 二酸化炭素、硫化水素による血管拡張作用も科学的に立証され、動脈硬化性閉塞症などへの効果も確立されてきている。
- 酸性泉や酸性+マンガン+ヨウ素含有泉の培地には雑菌が増殖ことから、皮膚疾患への効果に対して科学的な根拠を持つことになった
- アルカリ性泉は、その鹸化作用から 皮膚表面のたんぱく質を溶かすことが、ニンヒドリン反応などで容易に観察され、滑らかな皮膚が得られる機序につながる
- 温泉地を訪れることで、人間本来のもつ環境適応反応を利用し総合生体調整作用が高まる
つまり、
- 温泉は主に温熱効果による
- 血液循環改善、疼痛緩和、筋・関節拘縮改善、免疫力向上が期待でき、温泉に含まれる化学物質により効果が高まる
- また泉質によって、動脈硬化性閉塞症や皮膚疾患などへの効果が期待できる
ということです。
温泉でなくても温熱効果は得られますが、温泉の化学物質や温泉地に訪れるということもカラダに良い反応を起こさせるのですね。
温泉とは
温泉って何?
温泉は、昭和23年に制定された「温泉法」によりしっかりと定義があります。
大雑把に説明すると、【地面から出てきた25度以上または規定の物質が含まれた温水】です。
つまり、地面を掘って25度以上の水が湧き出れば温泉ですし、
25度未満でも「リチウムイオン」「水素イオン」「フッ素イオン」「メタけい素」など規定されている物質が一定以上含まれていれば温泉なのです。
細かい定義は以下の通りです。
温泉の定義
温泉は、昭和23年に制定された「温泉法」により、地中からゆう出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く。)で、表1の温度又は物質を有するものと定義されています。
療養泉って何?
療養泉とは、その名の通り【治療目的の温泉】のことです。
細かい定義は以下の通りです。
療養泉の定義
療養泉とは、温泉(水蒸気その他のガスを除く。)のうち、特に治療の目的に供しうるもので、表2の温度又は物質を有するものと定義されています。
これらの物質の含有量によりさらに泉質が分類されます。
泉質
- 単純温泉
- 塩化物泉
- 炭酸水素塩泉
- 硫酸塩泉
- 二酸化炭素泉
- 含鉄泉
- 硫黄泉
- 酸性泉
- 放射能泉
鉱泉って何?
鉱泉には広義と狭義があります。
広義の鉱泉は、【地中から湧き出たのもすべて】です。
地中から湧き出た鉱泉の中で、条件を満たしたものを温泉や療養泉と分類するという考えです。
狭義の鉱泉は、【温泉以外の地中から湧き出た水】のことです。
泉温別の分類では、25度未満の温泉に分類されない温水を冷鉱泉(通称:鉱泉)と呼んでいます。
泉温による分類
- 冷鉱泉 25℃未満
- 低温泉 25~34℃未満
- 温 泉 34~42℃未満
- 高温泉 42℃以上
温度や物質の量によって分類される1例【温泉?療養泉?鉱泉?】
ちょっとややこしい温泉の分類を硫黄の含有量を例にして整理しましょう。
硫黄は含有量が1mg以上2mg以下が温泉、2mg以上が療養泉に分類されます。
そのため硫黄の含有量による分類は以下の通りになります。
硫黄の含有量による分類
- 1mg未満 ➡︎鉱泉
- 1mg以上2mg以下 ➡︎温泉
- 2mg以上 ➡︎療養泉(硫黄泉)
※温度による分類では25度以上が温泉に分類されるため、硫黄が1mg未満であってもの25度あれば温泉に分類されます
まとめ
温泉はカラダに良いとよく耳にしますが、科学的に根拠があるのか半信半疑でした。
私は普段整形外科に勤めているため、医学的な調べ物をする時はCiNiiやJ-STAGEというサイトで論文を調べています。
そこで今回温泉の効果が科学的根拠があるのか論文を検索し調べてみました。
結果は…
「温泉」に関する論文が出てくる出てくる。
その多さに驚きました。
※「温泉」「効果」の検索結果(2019年7月31日現在)
CiNii:1,201件
J-STAGE:7,847件
温泉効果のほとんどが温熱効果によるもので、病院のリハビリで行うホットパックや灸治療の作用機序と同じです。
温泉の特異的な効果として、泉質別の化学的効果や温泉地特有の環境的効果があり温熱効果を高めます。
さて、温泉が科学的にもカラダに良いということがわかったところで、今日もこれから温泉に入ってきます。
日々医学・科学は進歩するため、温泉の効果も今よりも解明されることでしょう。
今後も最新の情報をお伝えしていきます。